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糖質制限の本がたくさん出版され、パーソナル・プライベートジムのライザップのCM・人気とともに、糖質制限はダイエットの一種としてブームともいえる状態になりました。

そんなこともあって、「糖質」という言葉が一般的にもかなり認知されるようになったと感じています。

ただ「糖質制限」といえば「炭水化物抜きダイエット」を思い浮かべる人が多いようですが、「糖質」=「炭水化物」ではありません。

管理栄養士のチカさん

では糖質とな何なのでしょうか?本当にダイエットのためには糖質は摂らなくてよいのでしょうか?この辺を管理栄養士の視点でひも解いていきます。

糖質制限ダイエット=炭水化物制限ダイエット ではない

よく耳にするようになった「糖質制限ダイエット」という言葉ですが、「炭水化物抜きダイエット」の意味合いで使われることが多いようです。しかしこれは厳密には間違いです。

糖質と炭水化物の関係を理解するとわかるのですが、炭水化物とは、糖質と食物繊維を合わせたものだからです。
炭水化物=糖質+食物繊維

このうち、主に身体の活動に必要なエネルギー源となる役割を果たすのは糖質。

ですから、エネルギーを産生する栄養素は「糖質・脂質・たんぱく質である」としている文献もあります。(一般的に知られているのは「炭水化物・脂質・たんぱく質」)

食物繊維は私たち人間の消化酵素では消化されず、大腸で腸内細菌によって分解されわずかにエネルギーを発生させますが、通常エネルギー源として考えられることはあまりありません。

ですから、減量とかエネルギーコントロールといった観点で考える場合には、炭水化物の中でも糖質が注目されるわけです。

つまり
糖質制限ダイエット=糖質を制限(食物繊維の制限は含まない)
炭水化物ダイエット=糖質+食物繊維を制限。言葉の意味としては食物繊維のダイエットも含まれてしまう。
という違いが厳密にはあるのです。

ちなみに、たんぱく質や脂質の多い食品からも糖質の供給が全くないわけではありませんが、主に糖質摂取量をコントロールするとなると、主だった摂取源となる食品群とその加工品、そのほかアルコール類で糖質の数値の高いものや調味料類に注意が必要となります。

 

炭水化物はなぜダイエットの悪者に?

身体活動に必要なエネルギーを供給してくれるのは、
糖質(炭水化物)・脂質・たんぱく質の3つの栄養素。
※先の段落に書いたように、エネルギーとしては糖質の方が正確なのですが、一般的になじみのある炭水化物を以下では使っていきます。

エネルギーをどの栄養素からどのくらいずつ摂取するかも大切だと考えられていて、1日に摂取するエネルギーのうち50~65パーセントくらいを炭水化物から摂取するようにしましょうと言われています。(厚生労働省「日本人の食事摂取基準2015年版」より)

半分以上のエネルギーを炭水化物から摂取するということは、しっかり炭水化物を含む食品を食べているはずなのに、私たちの身体を構成する成分中で炭水化物は1パーセント以下しかありません。

つまり、炭水化物はエネルギーとして使われてしまって、身体にはほとんど残らないということです。

では摂り過ぎて使いきれない炭水化物はどうなるのか。これはエネルギー貯蔵の目的で、中性脂肪に変換されて蓄積されます。

ちなみに炭水化物以外のエネルギーを産生する栄養素はどうかというと、体構成成分のうち、たんぱく質は15~18パーセントくらい、脂質も16パーセント以上というのが一般的な組成とされています。

ですからたんぱく質や脂質は、エネルギーとして使われる以外に身体の構成成分になる役割も持っているということになります。

つまり、炭水化物を摂り過ぎると中性脂肪が蓄積し、
炭水化物を制限するとエネルギー消費の不足分の代わりに、身体を構成しているたんぱく質や脂質がエネルギーとして消費されて体重が減るという原理が考えられます。

最近「炭水化物を制限したダイエット」がとても注目されているのは、ここに着目した考え方です。

確かに一時的に見ると「体重を減らす」という目的を果たすには結果を出しやすい方法ですから、成功をした人が多くなればそれだけ支持する人も増えます。

けれど長期的に見ると、これが危険だということもわかります。

炭水化物から消費エネルギーが供給されないことで、身体を構成する成分として使われるべきたんぱく質や脂質が消費エネルギーとして使われてしまい、その本来の役割を果たせなくなるからです。

「身体を構成する成分」というのは、身体を支える筋肉や骨、細胞膜、血液の成分、その他内臓や肌、爪、髪の毛…身体を構成するパーツを挙げ始めたらキリがありません。

それらは常に新陳代謝を繰り返し、新しいものと古いものが入れ替わっていくというサイクルの連続で生まれ変わっています。

炭水化物の極端な制限は、このサイクルを狂わせるものだということを知っておいてください。

 

糖質の構造と種類

私たちが糖質を摂取している主な食品には、ごはん・パン・麺類といった穀類や、いも類、果物、豆類、砂糖などがあります。

また野菜類のなかでも、かぼちゃやれんこん、とうもろこしなどは比較的糖質を多く含んでいるものになります。

砂糖のようにわかりやすく甘いもの以外にも糖質を含んでいる食品はたくさんある訳です。

「糖」という文字から甘いものというイメージが強いですが、すべてが甘いとは限らないので味わいだけで分類することはできません。

これには糖質の種類が関係しています。

糖質は構造で分類すると、大きく「単糖類」「少糖類」「多糖類」という3つに分けることができます。

「単糖類」というのは糖質としての最小単位で、私たちが食事をして糖質を摂取した場合、小腸から吸収される状態です。つまり長い消化の過程で、糖質を単糖類にまで分解していくのです。単糖類の代表的なものに、ブドウ糖・果糖・ガラクトースがあります。

「少糖類」というのは、単糖類が2~10個程度連なったもので、食品に多く含まれているのはこのうちの「二糖類」になります。

二糖類とはその名のまま、単糖類が二つ連なったものです。例えば砂糖はショ糖とも呼ばれる二糖類で、ブドウ糖と果糖が一つずつ連なってできています。麦芽糖はブドウ糖が二つ連なっている構造です。牛乳などに含まれる乳糖はブドウ糖とガラクトースが一つずつ連なってできています。

少糖類はオリゴ糖類とも言われていて二糖類以外にもあるのですが、単糖が3個以上結合した少糖類は難消化性オリゴ糖と呼ばれ、ヒトの消化酵素では消化されないものが多いので、エネルギー供給の役割にはあまり該当しません。

甘みはあるので、砂糖の代わりの甘味料として使われたり、腸内環境を整えたりするのに役立つと考えられています。

「多糖類」は少糖類以上に単糖が連なったもので、11個以上無数の結合となります。この中には消化性多糖類と難消化性多糖類があって、消化性多糖類の代表的なものがでんぷんです。

でんぷんは、穀類やいも類、豆類に多く含まれている糖質で、ブドウ糖がたくさん結合している状態です。消化性というだけあって消化されるわけですから、エネルギー源となります。

私たちがブドウ糖を摂取するとすぐに使わない分は肝臓でグリコーゲンに合成して貯蔵しますが、このグリコーゲンも消化性多糖類の一種です。

一方難消化性多糖類というのはヒトの消化酵素で消化できないので、エネルギーの心配はほぼありません。食物繊維の一種であるセルロースやペクチンといったものが挙げられます。

 

糖質と炭水化物 まとめ

炭水化物は大切なものです。炭水化物は糖質と食物繊維を合わせたものでしたね。

エネルギー源としてしっかり糖質を摂ることも、体内の余分なものを排泄し腸内環境を整える食物繊維を摂ることも、身体には大切な働きです。

炭水化物については、どの程度制限すると身体に良いのかという議論が収束を見ませんので、さまざまな説があります。

これは一つに、「パンだけ」「パスタだけ」「甘いドリンクをよく飲んでいる」といった食行動をとる方が多く、糖質過多になってしまっていることへの警鐘でもあります。

大切なことは「適正なバランスを取ること」。

炭水化物が大切だからといって炭水化物ばかりの摂取に偏るのも違いますし、ダイエットのために炭水化物を極端に制限するのも違います。

「栄養素」はいずれも、私たちが生きていくうえで欠かせないものです。

炭水化物も、たんぱく質や脂質、ビタミン、ミネラルもすべて栄養素ですから、何かを極端に削って別のもので補うということはできないということを忘れないでください。

参考文献:『栄養の教科書』中嶋洋子監修 新星出版社
『製菓衛生師全書』日本菓子教育センター

この記事を書いた人

管理栄養士のチカさん
管理栄養士のチカさん
1999年に管理栄養士の資格を習得。
現在フリーの管理栄養士として、食関連資格教材作成、専門学校講師、栄養講話講師などの仕事をしています。
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