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最近の健康志向と相まって、缶コーヒーやお酒などの飲料では「糖類ゼロ」や「糖質カット」「糖質オフ」されたものが人気です。でも、この糖質という言葉、
「糖分・砂糖が入って無い」とか「カロリーが少ない」という印象を持つ人が多いのではないでしょうか?

 

体重コントロールのためにエネルギーを適正に摂ろうと考えると、あらためて日頃よく目にしている表示の文言が気になってきますよね。これまでは「オフ」とか「カット」とか書いてあると、「ちょっと良いかもしれない」となんとなく選んでいたものでも、よく見てみると魅惑的な言葉に惑わされて、その意味するところを正確に知らないということも多いのではないかと思います。
日頃口にする食品のうち加工食品が占める割合は非常に高いので、表示を頼りに食品を選択しなくてはいけない場面は少なからずあります。正しく意味を理解して、きちんと表示を読み解けるようになることが大切です。

「なんとなく」で書かれている言葉はありません

食品表示でよく見かける「糖質」「糖類」「糖分」という言葉。どれも似たようなものに思えますが、同じように考えても良いのでしょうか。
パッケージに踊る文言は、メーカーさんにとってはどれもとても大切な売り文句です。正確に内容を伝えることはもちろんですが、「いいな」とか「買ってみようかな」とか思ってもらわなくてはなりませんから、一つ一つの言葉を「なんとなく」で書いている会社はないでしょう。どれも練りに練られている言葉なのです。
「糖質ゼロ」と「糖類ゼロ」があったとして、もし同じ意味ならどちらかに統一すれば良いはず。しかし売り場に行けば隣り合った商品でも微妙に文言が違うことは珍しくありません。

よく目にする用語を整理しておきましょう 「糖質」とは

糖質とは、炭水化物から食物繊維を除いたもののことです。炭水化物の中で主にエネルギー源としての役割を果たすものを総じて「糖質」と言います。これには、単糖類、少糖類、多糖類といったものが存在します。
単糖類というと、ブドウ糖や果糖、ガラクトースといったものがよく知られています。単糖類は糖質の最小単位で、これ以上小さく分解すると糖質ではなくなってしまうものを指します。
少糖類はオリゴ糖類と呼ばれることもあって、単糖類が2~10個程度連なったものを指します。この中で単糖類が2個結合している「二糖類」は食品に多く存在しています。例えば砂糖の主成分であるショ糖。ショ糖は果糖とブドウ糖が1つずつ結合した二糖類です。ブドウ糖が2分子結合したものが、麦芽糖。ブドウ糖とガラクトースが1つずつ結合したものが乳糖。これらショ糖・麦芽糖・乳糖が代表的な二糖類です。少糖類には二糖類以外もありますが、それらの多くは甘さを感じさせる能力はあるものの消化されにくく、エネルギー源としての役割をほとんど果たしません。腸内細菌のエサとなったり、低エネルギー甘味料として利用されたりします。
多糖類には代表的なものにでんぷんやグリコーゲンがあります。単糖類が11個以上非常に多数結合したものになります。多糖類にはでんぷんやグリコーゲンのような「消化性多糖類」のほかに、「難消化性多糖類」というヒトの消化酵素で分解されにくく腸まで消化されずに到達するセルロースやペクチンなどの食物繊維も存在します。
表示で「糖質カット」とあった場合には、単糖類・少糖類・多糖類の全てを対象として、基準を満たしているということになります。

よく目にする用語を整理しておきましょう 「糖類」とは

糖類とは、糖質の一部で、単糖類と二糖類に限ってグルーピングしたときに使われる言葉です。いずれも構造は単純で、単糖類は糖質の最小単位ですし、二糖類も結合を1回切るだけで最小単位の単糖類になります。
つまりこれらは糖質の中でも、消化吸収されやすいものです。食品に含まれている糖にはブドウ糖やブドウ糖を含む化合物が多いので、消化吸収されやすい食品はおおむね血糖値を上げやすいという特徴を持ちます。血糖値の急激な変動は身体に負担を与えたり、食欲のリズムを乱れさせたりする意味で、できれば避けたい事態。また健康診断で「糖尿病予備軍」などと言われたことがある方にとっては、血糖値の変動は気になることです。そのため糖類含有量に関する情報を得たいという需要が多く、食品表示でも「糖類」という表示が並ぶことがあります。
「糖質」と「糖類」を比較すると、「糖類」は「糖質」の一部で狭い範囲を指していることがわかりました。つまり「糖類ゼロ」と書かれている食品があったとしても、これは必ずしも「糖質」が含まれないという訳ではないということがわかるでしょうか?単糖類や二糖類は含まないけれど、多糖類を含んでいる食品については「糖類ゼロ」と表記することが可能なのです。「糖類ゼロ」と書いてあるのに甘さを感じるのはなぜだろうかと思ったら、糖質のうちオリゴ糖類が使用されていたということもあるでしょう。自分が避けたいものや注目しているものは何なのか、意味を理解したうえで目的に合わせて選ぶ必要があります。

よく目にする用語を整理しておきましょう 「糖分」とは

さて、ここで悩ましいのが「糖分」という表記です。実は「糖分」という言葉には明確な定義はありません。ですから表示としてはあまり適切であるとは言い難いのですが、実際には見かけることもありますよね。
この場合「糖分」という言葉を使っている人が、「糖質」を指して表記しているのか、「糖類」を指して表記しているのかはわからないのです。
手がかりになるとしたら、栄養成分表示ではないかと思います。食品表示法の施行に伴い、加工食品には栄養成分表示をつけることが義務化されました。ここで必ず表記しなくてはいけないとされている項目は、「エネルギー(熱量)・たんぱく質・脂質・炭水化物・食塩相当量」の5項目です。炭水化物については、糖質と食物繊維の内訳表示にしたり、さらに糖類の内訳を併記したりしても良いことになっています。内訳表示があればさらに詳しい情報を数字で確認することができるので、「糖分」が何を指すのかを知る手がかりになります。もし内訳表示がなかったとしたら、炭水化物の含有量とエネルギー値を見て、果たして売り文句の指している魅力的な効果がこの食品から得られるのかどうかを推察しましょう。
炭水化物のうち食物繊維が占める割合が高い場合はおそらく内訳表示をするでしょう。そうでなくても、炭水化物(糖質)とたんぱく質は1グラムあたり約4キロカロリー、脂質は1グラムあたり約9キロカロリーを供給するということを知っていれば、糖質からどの程度のエネルギーが供給されるのかを計算で求めることも可能です。ただし今知りたい情報はおそらく「糖質が何グラム含まれているか」というような算数的なことではなく、「本当にこの食品を食べても太らないか」というようなことだと思われますので、栄養成分表示をしっかり確認するだけで、多くの手がかりを得ることができるのではないかと思います。

強調表示のルール

言葉の使い方の違いには、もう一つ気をつけなくてはいけないことがあります。それが「強調表示」と呼ばれるものです。強調表示は食品表示法内の食品表示基準において決められているルールです。
栄養成分によって、欠乏あるいは過剰摂取が私たちの健康に影響を与えると考えられている場合、適切な摂取ができるように基準を設けて表示の仕方を決めています。欠乏することが心配されるものには「補給できますよ」ということが強調されているものが存在し、過剰摂取による害が懸念されるものは「適切な摂取ができますよ」あるいは「含まれていませんよ」ということを伝えているものが見られます。ここで、「補給できますよ」ということをお知らせしても良いとされている栄養素の項目、あるいは「適切な摂取ができますよ」「含まれていませんよ」ということをお知らせしても良いとされている栄養素の項目はそれぞれ決められています。決められている項目以外について勝手に強調表示をすることはできませんが、基準を満たしているものであれば個別に申請をしなくても強調表示をしても良いことになっています。
「エネルギー(熱量)」や「糖質」「糖類」といったものは過剰摂取を避けたいものになりますから、「含まない旨」あるいは「低い旨」、または「低減された旨」といったことがルールの元で表示されています。ルールには基準の量を下回っていれば表示して良いという絶対表示と、従来品など何かと比較して少なくなった基準値を下回る相対表示があります。
「無〇〇」「〇〇ゼロ」「ノン〇〇」という表記は「含まない旨」を示しています。これに対して「低〇〇」「〇〇控えめ」「〇〇ライト」というのは「低い旨」を示しています。どちらも絶対表示です。
ここで気をつけたいのは、「含まない旨」で設定されている基準値。食品100グラムあたりについて、エネルギーであれば5キロカロリー未満、糖質や糖類については0.5グラム未満であれば「無・ゼロ・ノン」といった表記が許されており、厳密にはゼロではないものも含まれます。
「低い旨」であれば、食品100グラムあたりについて、エネルギーでは40キロカロリー未満(100ミリリットルの場合は20キロカロリー未満)、糖質や糖類については5グラム未満(100ミリリットルの場合は2.5グラム未満)であれば「低・控えめ・ライト」という表記が許されています。つまり、「低い旨」は「含まない旨」よりもやや基準があまいということになりますから、「ノンシュガー」と「砂糖控えめ」の商品が並んでいたら「ノンシュガー」の方がより厳しい基準で砂糖を制限しているものであることがわかります。
さらに相対表示で示される「〇〇30%カット」「〇〇▲グラムオフ」「〇〇ハーフ」といった表示では、食品100グラムあたりについてエネルギーであれば40キロカロリー以上(100ミリリットルの場合は20キロカロリー以上)の差がついていて、なおかつ25%以上の相対差が必要となります。糖質や糖類であれば5グラム以上(100ミリリットルの場合は2.5グラム以上)の差がついていて、なおかつ25%以上の相対差が必要となります。ですから、ちょっと減らしたからといってすぐに減らしたことを強調する表示がつけられるわけではありません。でも何と比較するかによっては、「低減された旨」を表示しているものよりも他社の従来品の方が低い値を示す場合もあるわけですから、パッケージ表面の目立つところに配置されている文言だけに踊らされることなく、きちんと栄養成分表示を確認する必要があるでしょう。
どのくらい減ったとか、少ししか含んでいないといったあいまいな捉え方は、実はあまり食事の栄養コントロールには役立ちません。実際にはどのくらいの摂取となるのかということが大切ですから、栄養成分表示で実際の値を確認することに意味があるのです。

まとめ

「含まない旨」と「低い旨」の違いを考えると、時々混乱してしまうこともあると思います。そんな時にわかりやすいのが牛乳です。牛乳では脂質を対象にして「無脂肪牛乳」とか「低脂肪牛乳」とか、または特に何も表示されていない普通牛乳もありますよね。脂質が多い順番に並べると「普通牛乳→低脂肪牛乳→無脂肪牛乳」の順となることがわかると思います。
これは缶コーヒーやビール、その他の食品でも同様なのですが、どうも牛乳以外の食品では使われる表現のバリエーションが多く、混乱をきたすようです。
大切なことは表示の指す用語の意味を正確に理解したうえで、それに見合った対価を支払うことではないかと思います。メーカー努力によって減らされているから少し高い価格でもお金を払っても良いと思えるか、従来品を手ごろな価格で購入して摂取量で調整しようとするか。「見合った対価を支払う」というのは、このようなことです。
強調表示のルールは少し難しく感じられたかもしれません。でも用語を覚えることに一生懸命になる必要はありません。皆さんはパッケージ表面に踊る売り文句だけに惑わされることなく、栄養成分表示をきちんと読み比べて選択すれば良いのです。

参考:消費者庁「食品表示基準」
東京都福祉保健局「栄養成分表示ハンドブック」

この記事を書いた人

管理栄養士のチカさん
管理栄養士のチカさん
1999年に管理栄養士の資格を習得。
現在フリーの管理栄養士として、食関連資格教材作成、専門学校講師、栄養講話講師などの仕事をしています。
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