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管理栄養士のチカさん
管理栄養士のチカさん

健康維持にはバランスの良い食生活が欠かせません。とは言いますが、バランスの良い食事とはどのようなものを指すか、説明することはできるでしょうか。バランスにはいろいろな要素があります。例えば動物性食品と植物性食品のバランス。1日3食のバランス。けれど一番気をつけたいのは、やはり栄養素のバランスです。エネルギーになる栄養素ばかりではなく、エネルギーを作り出すのを助けてくれる栄養素も必要ですし、余分なものを排泄しなければ栄養素の吸収も悪くなります。エネルギーを産み出す栄養素にも種類がありますが、それぞれどのくらい摂ればバランスが良いと言えるのでしょうか。
これらは栄養のお話の基礎的なことですが、これさえ知っておけばバランスの良い食生活を送るのは簡単です。一つ一つの栄養素を紐解きながら、バランスの良い食事について考えていきましょう。

【炭水化物とは】…三大栄養素の一つ

炭水化物とは、エネルギー源となる糖質とヒトの消化酵素では消化されないためほぼエネルギーとしては利用されない食物繊維を合わせたものです。ここでは糖質についてご説明します。
糖質は私たちにエネルギーを供給してくれる大切な栄養素です。エネルギーを持つ他の栄養素にはエネルギー供給以外の役割がありますが、糖質の役割はとにかくエネルギーを供給すること。私たちが生きていくためにはエネルギーを確保しなくてはならず、その大切な役割を担っているのが糖質なのです。
糖質には消化吸収にあまり時間を要さない、単糖類や少糖類といったものと、ゆっくりと消化吸収される多糖類と分類されるものがあります。単糖類にはブドウ糖や果糖などがあり、少糖類には砂糖(ブドウ糖と果糖が結びついたもの)や麦芽糖(ブドウ糖が2分子結びついたもの)などがあります。一方多糖類の代表格はでんぷんで、ブドウ糖が沢山結びついた状態です。私たちの身体は糖質を食べると単糖類にまで細かくしてから吸収します。単糖類にしないと吸収ができない、つまり体内で利用することができません。
吸収したブドウ糖は血糖として体内の各器官で利用されるほか、肝臓ではグリコーゲンとして合成されて貯蔵されます。
炭水化物と多く含む食品には、ごはん・パン・麺といった主食になるものや果糖の多い果物などがあります。そのほか、砂糖や芋類も炭水化物の多い食品です。

【たんぱく質とは】…三大栄養素の一つ

たんぱく質はエネルギーを持つ栄養素ですが、体内での働きはエネルギー源としてよりも身体を作る働きが重要になります。髪・爪・血液・臓器・皮膚といったものはたんぱく質からできています。
私たちがたんぱく質を摂ると、消化吸収の工程を経てアミノ酸にまで分解され、吸収されます。体内に入るとこのアミノ酸がまた再合成をして、さまざまな私たちの身体の部品に生まれ変わるのです。また、身体の調整にかかせない酵素やホルモンといったものもたんぱく質を材料に作られますので、身体には非常に重要な栄養素となります。
万が一たんぱく質以外のエネルギーを産生する栄養素の摂取量が足りないと、たんぱく質をエネルギーとして使わなくてはいけなくなります。それにより本来たんぱく質の働きである身体を作る働きがおろそかになってしまいます。糖質制限ダイエットのように何か単独の栄養素を極端に制限するとこのようなしわ寄せがくるのだということを、ぜひ知っていただきたいと思います。
たんぱく質は必須アミノ酸と言われる、体内で合成できないため食物から摂らなければならないアミノ酸9種類がいずれも欠けることなく存在していると利用効率が良く、どれか一つでも足りないものがあると、たとえその他のものが豊富であっても上手に利用できないという性質があります。
たんぱく質が豊富であり、またアミノ酸バランスも良い食べ物には、肉類・魚類・卵・牛乳や乳製品、そして大豆や大豆製品といったものがあります。

【脂質とは】…三大栄養素の一つ

脂質は1グラムあたり9キロカロリーという高エネルギーを供給する栄養素です。エネルギーを産み出す他の栄養素である糖質とたんぱく質は、1グラムあたり4キロカロリーの熱量を持っていますが、脂質はその倍以上。効率の良いエネルギー源であり、つまりは摂り過ぎに注意が必要と言い換えることもできます。
脂質はエネルギー源以外にも、私たちの身体で細胞膜を作る材料となったり、ホルモンの生成に役立ったりと多くの働きをしています。ですから脂質の不足は血管がもろくなったり、肌がパサパサとしてしまったりします。
食品中の脂質の大部分は中性脂肪です。これは単純脂質と分類されるもので、アルコールと脂肪酸が組み合わさったシンプルな構造です。単純脂質にリンや糖が結合しているのが複合脂質で、リン脂質や糖脂質として脳や神経、内臓などの成分となります。単純脂質や複合脂質を加水分解したものが誘導脂質で、コレステロールはここに分類されます。コレステロールは悪いもののような認識をされがちですが、細胞やホルモンを作る材料となったり、消化を助ける胆汁酸の原料となったりしています。
また、脂溶性ビタミンは油に溶けやすい性質があるので、脂質と合わせて調理して摂取すると効率が良いという利点があります。
脂質は植物油やバター・ラードといった動物油以外に、種実類にも多く含まれています。

【PFCバランスとは】

エネルギーを産生する栄養素は、たんぱく質・脂質・炭水化物のみです。この3つの栄養素からそれぞれどのくらいエネルギーを摂取しているかをあらわしているのが、PFCバランスです。Pはたんぱく質(proteinの頭文字)、Fは脂質(fatの頭文字)、Cは炭水化物(carbohydrateの頭文字)です。
たんぱく質と炭水化物は1グラムあたり4キロカロリー、脂質は1グラムあたり9キロカロリーですから、それぞれの摂取量に4あるいは9をかければ、それぞれの栄養素から何キロカロリーずつ摂取したかがわかり、それぞれ何パーセントに当たるかが求められます。
「日本人の食事摂取基準2015年版」では、P(たんぱく質)13~20パーセント:F(脂質)20~30パーセント:C(炭水化物)50~65パーセントの割合で摂取するのが望ましいとされています。
近年の日本人は、脂質が多くなりがちで炭水化物が少なくなりがちという傾向にあります。これは食の欧米化が進んだと言われている頃からの蓄積で、その結果さまざまな生活習慣病の発症が増えていると懸念されます。
「バランスの良い食生活」と言われる要素には、このPFCバランスも挙げられるのです。

【ビタミンとは】…五大栄養素の一つ

ビタミンは身体の調節をする働きを担っている栄養素で、油に溶けやすい性質のある脂溶性ビタミンと、水に溶けやすい性質を持つ水溶性ビタミンがあります。脂溶性ビタミンはビタミンA・D・E・Kの4種類、水溶性ビタミンはビタミンB群8種類(ビタミンB1、B2、B6、B12、葉酸、パントテン酸、ビオチン、ナイアシン)とビタミンCの、合わせて9種類です。
油に溶けやすい性質を持つ脂溶性ビタミンは、脂質を多く含むものと一緒に調理すると吸収が良く、肝臓に運ばれ貯蔵もされます。そのため過剰症の心配があります。多くの場合、サプリメントではなく日頃のお食事からビタミンを摂取する場合にはあまり過剰症の心配はいりませんが、ビタミンAについてはレバーやうなぎなどに多く含まれていることから、あまりこれらの食品を継続的に多く摂取していると過剰症になることがあります。
一方水溶性ビタミンは水に溶けやすいことから体内にとどまりにくく、余剰分は尿とともに排出されてしまいます。摂り方のコツとしては一度にたくさん摂るのではなく、3食でコンスタントに摂ること。特にビタミンB群は相互に働きあいながら炭水化物・脂質・たんぱく質の代謝に関わりますので、これらと一緒に摂ることで体内のエネルギー産生がスムーズになります。
野菜や果物をさまざまな種類を意識して摂ると、上手に摂取できます。

【ミネラル(無機質)とは】…五大栄養素の一つ

食品中の無機物にあたるものです。いずれも微量ですが人間の体内では合成できませんので、食品からきちんと摂取する必要があります。身体の調節や骨などの組織を作るのにも欠かせない栄養素です。
ミネラルは「日本人の食事摂取基準2015年版」で多量ミネラルと微量ミネラルに分けられています。多量ミネラルは比較的体内の含有量も多いもので、カルシウム・リン・マグネシウム・カリウム・ナトリウムがあります。微量ミネラルは、含有量はわずかながら欠かせないもので、鉄・亜鉛・銅・マンガン・ヨウ素・セレン・クロム・モリブデンがあります。
中でも不足しがちなのはカルシウムと鉄。カルシウムはいわずと知れた、骨の形成には欠かせない栄養素です。鉄は血液中でたんぱく質と結合して酸素を運搬してくれる栄養素で、足りないと貧血を起こすことは有名です。どちらも摂取量が足りないだけでなく、吸収率も悪いので、意識して摂取すべき栄養素です。
ミネラルは動物性食品・植物性食品それぞれから摂ることができます。過剰症の心配もあるものですので、サプリメントからではなく日頃のお食事できちんと摂れるようにしていきましょう。

【食物繊維とは】

食物繊維は炭水化物のうち、ヒトの消化酵素ではあまり消化されないものを言います。エネルギーにならないことから長く重要視されてこなかったものの、便通を良くする働きや血糖値の上昇を抑える働き、コレステロールの吸収を阻害する働きなど、身体から余分なものを外に出すことも大切であることが見直され、「第六の栄養素」(炭水化物・たんぱく質・脂質・ビタミン・ミネラルを五大栄養素と言います)とも言われるようになりました。
果物や海藻類に多い水溶性食物繊維と、野菜などに多い不溶性食物繊維があります。水溶性食物繊維は粘着性があるので胃腸内をゆっくりと移動します。そのため食べ過ぎを防いでくれたり、糖質の吸収をゆるやかにしたりといった効果が期待できます。不溶性食物繊維は水に溶けないので吸収するとふくらんでかさが増します。便の形を作ってくれることで便通を整えます。
食物繊維は腸内で腸内細菌の善玉菌がエサをすることで元気になり、腸内環境を整えてくれるます。また一部のビタミンは腸内細菌とともに合成されることも分かってきています。

【まとめ】

栄養素について見てみると、結局はさまざまな食品を食べることが栄養バランスを整えることにつながると気づくのではないでしょうか。何をどのくらい食べるかを毎日はかったり、計算したりするのは難しいので「一汁三菜」を意識して献立を考えましょう。
主食からは炭水化物、主菜からはたんぱく質、汁物と副菜・副副菜からはビタミン・ミネラル・食物繊維が摂れます。脂質は調理に使う分や各食品に含まれている分から自然と摂取できます。
私たちはエネルギーを摂らなくては生きていけませんが、エネルギーを産み出す炭水化物・たんぱく質・脂質だけを摂っていても、それを体内で利用するためにビタミンやミネラルも摂らないと上手にまわっていきません。また食物繊維によって余分なものを排泄しなければ、新たな栄養素を摂っても入っていかないのです。
栄養素とは私たちが生きていくうえで、必ず必要なもので食物から摂る必要のあるものです。機能性成分のようにその他の成分で注目を集める成分もありますが、それらは何か良い働きが期待されるだけで、必ず摂取しなければならないというものではないのです。栄養素を摂ると私たちは「栄養」という営みができます。
私たちが日々生きていくための営みができるように、しっかりと栄養素を摂取していく必要があるのです。