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管理栄養士のチカさん

「油は太るから」などとひとまとめにして言われていたのは、もはや過去のお話。今は食品売り場にも数多くの種類の油脂が並び、その特性に合わせた摂取方法が紹介されています。

敵対視されがちな脂質ですが、身体には少なからず必要なものですので、身体にとってうれしい油を上手に選んで摂っていきたいものです。

機能性食用油とは?

機能性食用油という言葉をご存知でしょうか。

植物油の機能性が注目されるようになり、油脂の摂り過ぎなどが原因で太ってしまったり、生活習慣病に悩まされてしまったりすることを予防しようと開発された油のことです。

メーカー各社思考をこらし、さまざまな食用油脂が発売されています。

血中脂質バランスの改善を謳うものばかりではなく、中には血圧に働きかけることを謳われているものも。

2015年4月から始まった機能性表示食品の制度を利用しているものも少なくありません。

脂肪酸とは?

そもそも油脂の質とは何で決まるのでしょうか。そのカギを握るのが脂肪酸です。脂肪酸とは脂質のおもな構成成分です。

炭素・水素・酸素からできていますが、炭素の鎖の結合の仕方で性質が異なり、体内での働きも変わってくるのです。

また中には「必須脂肪酸」と呼ばれる、私たちの身体では合成することのできない脂肪酸もあります。

リノール酸、α-リノレン酸、アラキドン酸という脂肪酸はこの「必須脂肪酸」に該当するので、必ず食べ物から摂取する必要があります。

「脂肪酸」とは3大栄養素のひとつでもある「脂質」を作っている成分のこと。
もっと詳しく知りたい方は→ 脂質とは?3大栄養素とは?

飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸

脂肪酸は炭素・水素・酸素から成り立っていて、炭素の鎖の結合の仕方で性質が変わってきます。

炭素の鎖が水素で飽和されていて、二重結合を持たない脂肪酸を「飽和脂肪酸」と言います。二重結合を含まないということは比較的安定した結合であるということです。

飽和脂肪酸は肉などの動物性食品に多く含まれる脂肪酸で、人の体内で凝固しやすいという性質があります。

常温で固体の、バターやラード(豚脂)、ヘッド(牛脂)といった脂がこれにあたります。

飽和脂肪酸はその性質から、血液の粘度を高めやすく、血液が流れにくくなることが心配されます。

摂取量が多すぎる場合、動脈硬化の原因となり、放置しておけば脳血管疾患や虚血性心疾患にもつながりかねません。

ですから「日本人の食事摂取基準2015年版」では、飽和脂肪酸について、18歳以上の男女ともに摂取エネルギー中の飽和脂肪酸のエネルギー比率を7%以下にすることを目標量として設定されています。

「不飽和脂肪酸」は炭素のすべてが水素と結びついているわけではなく、炭素同士が二重結合している部分がある脂肪酸です。

二重結合をいくつ持っているか、あるいはどの部分に持っているかといったことで、もっと細かい分類がなされ、それぞれに性質が異なります。

一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸

不飽和脂肪酸とは炭素のすべてが水素と結合しているのではなく、炭素同士が二重結合している箇所のある脂肪酸で、二重結合の数が1つだと「一価不飽和脂肪酸」、複数あると「多価不飽和脂肪酸」となります。

一価不飽和脂肪酸は「n-9系(オメガ9系とも言います)不飽和脂肪酸」と呼ばれることもあります。

多価不飽和脂肪酸は、二重結合を末端から3番目に持つ「n-3系(オメガ3系とも言います)多価不飽和脂肪酸」と、二重結合を末端から6番目に持つ「n-6系(オメガ6系とも言います)多価不飽和脂肪酸」とに分けられます。

一価不飽和脂肪酸(オメガ9系脂肪酸)

一価不飽和脂肪酸(オメガ9系脂肪酸)には、オレイン酸があります。一価不飽和脂肪酸は二重結合を1つしか持たないので、多価不飽和脂肪酸に比べると結合が安定していて、酸化されにくいと言えるでしょう。

オレイン酸を多く含む油には、オリーブオイル・菜種油(キャノーラ油)・落花生油・米ぬか油などがあります 。牛や豚の脂にも含まれているのですが、それらには飽和脂肪酸も多いため、あまり摂取に適した油脂とは言えません。

オレイン酸を摂りやすい油の代表格はオリーブオイルです。オレイン酸の名前の由来もオリーブオイルから単離されたことによるくらいですし、比較的入手しやすく使いやすい油ですのでオススメです。

オレイン酸には血中コレステロールを減らしてくれる効果が期待できます。また胃酸の分泌を調整してくれたり、腸を滑らかにしてくれたりといった消化や排泄に嬉しい効果も知られています。

市販の植物油のなかには、わざわざオレイン酸を強化させている油もあるほどです。

「日本人の食事摂取基準2015年版」では、一価不飽和脂肪酸についての摂取基準は特に定められていませんが、他の脂肪酸とバランスよく摂取していくことが良いでしょう。

n-3系(オメガ3系)多価不飽和脂肪酸

n-3系(オメガ3系)多価不飽和脂肪酸は、今大注目の脂肪酸です。

健康食品を取り扱うような展示会では各社こぞってオメガ3系脂肪酸を取り入れた商品を提案しています。

代表的な脂肪酸には、必須脂肪酸であるα-リノレン酸や、DHA・EPAといった脂肪酸があります。いずれも血栓を解消してくれたり、血液の流れを良くしてくれたりする効果が知られていて、生活習慣病予防を考えたときに歓迎される種類の脂肪酸です。

ちなみに必須脂肪酸であるα-リノレン酸は必ず食物から摂らないと体内で合成することができませんが、DHAやEPAは体内でα-リノレン酸から合成することができます。

DHAやEPAといった脂肪酸が魚に多く含まれているので、日頃の動物性食品を肉から魚にシフトするだけでもかなりの変化となります。

それ以外にn-3系多価不飽和脂肪酸を多く含む油には、最近はやりのえごま油やあまに油といったものがあります。

これらの油を使う時に注意をしたいのが、非常に酸化されやすい点です。ですから揚げ油や炒め油のように火を通して使う方法はオススメできません。

サラダやマリネに使うほか、食べる直前に一たらしするような使い方が向いています。また油自体を開栓した後にも酸化に気を配り、しっかり空気を遮断して冷蔵庫に保管し、早めに使い切るようにしましょう。

n-3系多価不飽和脂肪酸は、「日本人の食事摂取基準2015年版」では次のような目安量が設定されています。
男性 女性※※
18~29歳 2.0g/日 1.6g/日
30~49歳 2.1g/日 1.6g/日
50~69歳 2.4g/日 2.0g/日
70歳以上 2.2g/日 1.9g/日
※成人のみ抜粋  ※※ 妊婦・授乳婦を除く

n-6系(オメガ6系)多価不飽和脂肪酸

n-6系(オメガ6系)多価不飽和脂肪酸には、必須脂肪酸であるリノール酸やアラキドン酸があります。

かつて日本では、リノール酸ブームが起こったことがありました。リノール酸の血中コレステロール低下作用に期待が集まり、リノール酸を添加した油が非常に売れたのです。

しかし今では過剰摂取によって免疫力を抑制してしまうような弊害も知られてきており、適度な摂取が望ましいとされています。

必須脂肪酸ではありますので、摂取も必要です。n-6系多価不飽和脂肪酸を多く含む油には、大豆油・ごま油・紅花油(サフラワー油)・グレープシードオイル・とうもろこし油(コーン油)などがあります。日常よく使われる油が多いのではないでしょうか。

ちなみに紅花油(サフラワー油)はかつてのリノール酸ブーム時にリノール酸強化タイプが多く発売された代表的な油ですが、今ではn-3系多価不飽和脂肪酸であるオレイン酸を強化したものも発売されています。

「日本人の食事摂取基準2015年版」の、n-6系多価不飽和脂肪酸目安量も見ておきましょう。
男性 女性※※
18~29歳 11g/日 8g/日
30~49歳 10g/日 8g/日
50~69歳 10g/日 8g/日
70歳以上 8g/日 7g/日
※成人のみ抜粋  ※※ 妊婦・授乳婦を除く

【トランス脂肪酸とは?】

脂肪酸のなかには有害ではないかと心配されているものがあります。それが「トランス脂肪酸」です。天然には微量しか存在しない脂肪酸です。
トランス脂肪酸は炭素・水素・酸素からなる脂肪酸の結合で、二重結合をしている炭素に結合している水素が反対側にあるものを言います。同じ側にあるものは「シス型」といって天然に多く存在していますが、反対側にある「トランス型」は、加工油脂の製造工程で発生してしまうものです。ですから、マーガリンやショートニングといった油脂類はトランス脂肪酸含有が心配される油脂です。
トランス脂肪酸が「有害」とされるのは、摂り過ぎると心筋梗塞などの危険性を高めることが知られているためです。一部の国や地域ではトランス脂肪酸の含有量を食品表示に義務化したり、使用を禁止したりといった措置が取られています。
日本では、懸念する声があるなかで消費者庁などでは話し合いがなされているものの、表示の義務化や使用規制などは現時点では行われていません。これは日本で流通している食品の多くがすでにトランス脂肪酸に配慮されていて含有量がとても少ないことに加え、今の日本人の食生活では健康被害を及ぼすほどの摂取量にはならないだろうとされているためです。
確かにトランス脂肪酸の含有量は気になるところですが、トランス脂肪酸を気にするあまり、これまで使用していたマーガリンを全てバターに置き換えると…今度は飽和脂肪酸の摂り過ぎが問題になってくるわけです。
トランス脂肪酸については、加工した油脂の摂取量が多い方、またはパンや菓子に練り込みや揚げ油といった形で使われていることを考えるとこのようなものを食べる機会が多い方については、トランス脂肪酸の存在を正しく認識し、一部の油を代替したり、菓子類の摂取量を減らしてみたりすることは有効でしょう。

トランス脂肪酸に関するWHOの最新の科学的知見など、トランス脂肪酸の摂取と健康への影響(農林水産省)

機能性食用油とは? 脂肪酸とは? 身体に良い油の上手な摂り方 まとめ

管理栄養士のチカさん

脂肪酸の性質がわかってくると、機能性食用油だけでなく日頃から使っている油脂に関しても、選び方が少し変わってくるのではないでしょうか。

身体への効果として期待が大きく寄せられているのはn-3系多価不飽和脂肪酸でしたが、酸化されやすいという性質もあったので、加熱調理の時には一価不飽和脂肪酸を多く含むオリーブオイルに置き換えてみるなど使い方にあわせて油を選択しながら、脂肪酸バランスが良くなるように摂っていけると良いですね。

脂質に関しては全体的に「摂り過ぎは体重増加につながりやすい」ことも覚えておきましょう。脂を油で置き換えるだけではなくて、調理に使う油やパンに塗るバターといったついつい使い過ぎてしまう油脂類を見直すことも、油脂との上手な付き合い方です。

この記事を書いた人

管理栄養士のチカさん
管理栄養士のチカさん
1999年に管理栄養士の資格を習得。
現在フリーの管理栄養士として、食関連資格教材作成、専門学校講師、栄養講話講師などの仕事をしています。
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